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定款について

前回は、司法書士法第3条1項2号の「法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成」に設立時の定款があたるのか、というところで終わりましたのでその続きから。

この点、最判平12・2・8の判例及びその調査官解説においては、「登記原因証書となり得る書類は、一般的には、権利義務に関する書類として行政書士が作成することができる書類に該当するが、初めから登記原因証書として作成される場合は、登記申請の添付書類として法務局又は地方法務局に提出する書類に該当するから、司法書士が作成すべきものと解される。」との判断を示しています。

ではそもそも設立時の定款とはどのような法的性質を有するものなのでしょう。以下2点に考えを分類してみました。

➀定款は会社法により作成が義務付けられた内部的規律の文書としての側面が強く、設立の原因事実を直接示す登記原因証明情報とは必ずしもいえないという考え方。

②会社設立の原因事実(発起人の設立意思表示と出資の実行)を証明する情報として「定款および発起人の同意書類」等にあたり、定款は設立登記申請に添付すべき登記原因を証する情報の中核を成すものであるという考え方。

➀の考えによれば、定款は上記判例及び調査官解説にある「初めから登記原因証書として作成される」ものではない以上、司法書士法第3条1項2号に該当しないとの解釈もできます。

②の考えによれば、そのまま登記原因証書として司法書士法第3条1項2号の「法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類」にあたるとの解釈もできます。

まとめ

実務上の運用としては、日行連の「法人・企業支援」案内ページでは、「株式会社等の法人の設立手続とその代理(登記申請手続を除く)」を行政書士が行うと記載されており、法務局への設立登記申請そのものは行政書士業務に含まれないことを明確にした線引きがなされています。

国民目線からすると業際の見極めが難しいという観点からも、士業間で緊密に連携をとりながら行政書士法1条にある「国民の権利利益の実現に資する」ことができるよう努めていくのが重要だと改めて思う次第です。

※個人として業際問題を逡巡する上でまとまりのない記事になりましたことご容赦ください。また、あくまで個人の考えのため正確な情報に拠らない記載も存すると思われますことご留意ください。